2011年2月1日火曜日

建築とは決定の連続である

以前にも書いたかもしれないけれど、横浜桜木町の建築設計事務所でインターンを二週間ほど前からさせてもらっています。
自分の中で考えが一周して、設計事務所で働きたいと思い、そのためのインターンでもあるのだけど、第一義としてはリアルな建築が作られるところをもっと知りたい、設計するということについてもっと学びたいと思っていることがあります。
今まで建築学科というところで建築の専門教育を受けては来たけれど、それは建築をつくるということのホントの基本のキを学べるか学べないか、というところで卒業してしまう、つまりアタマのなかで自己表現としての設計や模型づくりは頑張るけれどもお金と土地と人と物質が複雑に絡み合った工作物としての建築についてはほとんど学べない(そこまで到達しない)のです。これは必要な時間でもあり、仕方のないことでもあるとは思います。

週三日のインターンとはいえ、数組のお施主さんにも会い、実際にリフォームや新築されたりする予定の敷地を実測調査したり現況図を描いたりしていると日々学ぶことがたくさんあります。簡単な図面の書き方ひとつにしても、建売民家の部材の名前にしても、知らないことが多すぎて自分にがっかりしますが、このインターンが実りあるものになっていると実感できて嬉しいです。

設計事務所にいて、強く感じることは、学生時代とは全く別のスピードで重要な決断が日々下されているということです。事務所では大きいものから小さなものまで様々なプロジェクトが進行しており、常にいろんなフェイズで決定が求められています。工期や予算といった大きな項目から、仕上げ材の素材、打ち合わせの日取り、どの業者が工事するか、など仕事として見れば全く当たり前のことではあるのですが、そんな当たり前のことさえ今まで体感できていませんでした。

先週末の金土日と後輩Oの四年生の卒業設計を手伝いに大学に久しぶりに泊まって作業していました。最初はほんとに模型の作り方のアドバイスとか、細かい締切りに対してケツを叩くとか、断面図を一枚書くとかのつもりで行ったんですが、直前まで後輩の設計ができてなくて、決まらないところが多いまま模型をつくっていきました。
結果的にはガイドと断面図一枚程度しか書けず、自分の力量不足とこの一年間の技術的なレベルアップのなさを実感したのですが、ひとつ強く思ったのは、決断の重要さでした。

今年はたくさん参加していた同期に聞くと、僕の手伝った後輩Oに限らないことなのですが、小さな決定ができずにあれもこれもと考えてるうちに時間が過ぎていく人が多かったそうです。僕の後輩は、提出5日前に行ったときSketch Upの画面の中でスタディしていたのですが、それはかなりよくなさそうでした。すでに建築に習熟している人や、完成立体パースの為に出来上がった案を立ち上げるためには有効なツールだと思うのですが、スタディとしてはマズイものに見えました。例えばスラブの出ひとつにしても、グリグリと延ばしたり縮めたり簡単にできてしまうためにアレもいいしコレもいいなと全く決めれないのです。
僕も卒制が終わったあと後悔したのが、模型をつくってスタディすることの少なさでした。大きな俯瞰の模型しかつくらなかったために、断面的な考察が一切できなかった。外形を決めたら内部の検討へ、内部を決めたら素材の検討へ(プロセスはそれぞれだけど)ということができていなかったのです。
一つ決めるから次に行ける、というプロセスを踏まないと建築など設計できるわけないのです。この実務的には当たり前だけれども教育的には明文化されてなかったことをメソッド化したのが藤村龍至さんでしょう。

Oの性格的な優しさが災いしたのかもしれませんが、決定をくだせないということが如何にプロジェクトを停滞させるかというのを卒業してみて改めてこういった機会に実感しました。
あと老婆心で気になったのは、Oもそうでしたが、過去の卒業設計本(横国の数年分やせんだい、早稲田や理科大の卒本など)を大量に揃えて、本棚にそれしか参照ソースがないという人がわりといたことです。学生の案を見たところで劣化コピーの劣化コピーにしかなりませんし、ヘタな図面を真似してもますます建築の図面とかけ離れていくだけです。
僕自身も四年生のときはいくつか参考にしていて、悲しくなりますが、それよりはちゃんと図面記号や寸法線の書いてある図面や雑誌を真似したほうが確実に設計はよくなると思います。これから大学で設計課題をやる後輩諸兄にはぜひ図面のきちんと載った本や雑誌を真似してもらいたいです。もちろん僕も勉強中です。

軽く書くつもりが長くなってしまいました。
シャープかつスピーディな決定の連続、はっきり言ってツラいことしかないのですが、卓球のラリーのようにテンポよく球を打ち返す、そしてあわよくば攻めこむということでしかモノはつくれないのだなと思うと、早くその術を身につけたいと楽しくなります。
早く仕事として建築に触れたいです。

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